Fitbitの新製品は「Wear OS 3」を搭載せず、使いやすさに磨きをかけた

グーグル傘下のフィットビットが、フィットネストラッカーの新モデル「Inspire 3」「Versa 4」「Sense 2」を発表した。いずれも最新機能を搭載するなど進化したが、OSにグーグルの「Wear OS 3」ではなく独自OSを引き続き採用したこともあり、機能性や使いやすさに磨きをかけている。
Fitbit Inspire 3 Versa 4 and Sense 2 on blue geometric backdrop
Photograph: Fitbit

Fitbitのスマートウォッチの上位モデルに「Wear OS 3」が搭載される──。あなたは、その日を待ちわびていたひとりだろうか? もしそうだとしたら、もう少し待つことになる。

フィットビットが同社の製品で最も人気のフィットネストラッカー3製品のアップデート版である「Inspire 3」「Versa 4」「Sense 2」を8月24日(米国時間)に発表した。すでに3モデルとも予約可能になっている。各モデルとも従来の製品より薄くスマートになっているが、どれも親会社であるグーグルのウェアラブルOSの最新版ではなく、フィットビット独自のOSを採用しているのだ。

この点について、わたしたちはまったく気にならない。Fitbitのソフトウェアは魅力的で、人気が高く、使いやすい。これらは「Wear OS」にはなかった特徴であり、大多数の人にとって最適なフィットネストラッカーとしてわたしたちがFitbitを推奨する理由のひとつだ。

グーグルがフィットビットの買収を完了して以来、わたしたちはいずれ起きるであろうWear OSへの転換を、一抹の不安とともに待っていた。Wear OSを搭載したFitbit製品も面白いかもしれないが、必ずしもそれほど便利でも楽しくもないものかもしれない。

少なくともフィットビットはVersaとSenseのOSについて、Apple Watchなどの競合製品に似せるようなアップデートを施している。そしていまのところ、Fitbitの端末から「Google マップ」や「Google ウォレット」に簡単にアクセスできる機能など、グーグルによるフィーチャー・クリープ(機能の増殖)は最小限にとどまっているようだ。

グーグルが考えるWear OSのあるべき姿に興味がある人は、10月ごろに発売が予定されている「Pixel Watch」の登場を見れば、今後の予想により役立つかもしれない。

進化したエントリーモデル「Inspire 3」

フィットネスバンド「Inspire 3」は、Fitbitのエントリーモデルのアップデート版となる。価格は100ドル(日本では12,800円)とシリーズで最も購入しやすいトラッカーであり、またガーミンの「vívosmart」シリーズの明らかな対抗馬だ。

常時オンになるカラーのAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイや、「10日間持続するバッテリー」など、この価格帯のトラッカーにはあまり見られない多数の機能が備わっている(バッテリーのもちに関しては、Inspireシリーズの別のモデルを使った経験から、実際はおそらく1週間くらいだろうと思われる)。

Inspire 3は、従来からFitbitに搭載されている歩数や歩行距離などの計測機能に加えて、健康をモニタリングする機能も新しくなった。血中酸素飽和度(SpO2)や体温(皮膚温)のほか、心房細動の兆候となりうる不整脈についても常時計測する。フィットビットによると、これらの機能は米食品医薬品局(FDA)の承認を受け、EU基準のCEマークを付与されているという。

Fitbitの「Inspire 3」。

Photograph: Fitbit

また、以前は上位機種だけに搭載されていた「アクティブな心拍ゾーン(分)」のような指標も採用されている。これは心拍数が上がって有酸素運動(カーディオ)や脂肪燃焼、ピークのゾーンに入る際に、音が鳴って知らせてくれる機能だ。

これまでと同様にFitbitの最も先進的なアルゴリズムは、サブスクリプションサービス「Fitbit Premium」の“壁”向こう側に閉じ込められている。利用するには月額10ドル(日本では640円)か、年額80ドル(同6,400円)を支払う必要がある。

サブスクリプションに含まれる機能には、さまざまな機能が含まれる。例えば「今日のエナジースコア」は、ユーザーがその日に休んで回復すべきか、あるいはハードなワークアウトをすべきかという判断をサポートしてくれる機能だ。10種の睡眠指標の追跡から睡眠パターンを特定し、ユーザーを分類する新機能「睡眠プロフィール」も含まれる(断続的に眠る「イルカ」タイプか、しっかりと眠る「クマ」タイプか、といった分類だ)。

またInspire 3は、従来のモデルより薄型になっている。鮮やかな3色のカラーバリエーションが揃い、半透明のシリコンバンドやクリップを含���新発売のバンドやアクセサリーも展開される。

上位モデルは「Apple Watch」と互角に戦える存在に

いま販売されているフィットネストラッカーやスマートウォッチのなかで最高峰の製品のひとつが「Apple Watch」だが、使用するにはiPhoneが必要になる。これに対して、Fitbitの「Versa 4」(230ドル、日本では27,800円)と「Sense 2」(300ドル、同32,800円)はiOSでもAndroidでも、ほぼどんなスマートフォンでも使用可能だ。それに、どちらもApple Watchと互角に戦える製品に大きく近づくような新機能が搭載されている。

まず、どちらの製品も、アップルのような使用感に近づくように調整が施された完全に新しいOSを搭載している。今後はエクササイズを始める際には、「ワークアウト」の画面にスワイプするやり方ではない。カスタマイズ可能なタイルをクリックすることで、エクササイズを開始したり天気を調べたりすることになるのだ。

これは昨年の「Fast Pair」への対応に続く変更点となる。Fast Pairはスマートフォンとのペアリングを素早く実行できるグーグルの技術だ。Fitbitの電源を入れるとスマートフォンの画面にポップアップが表示され、シームレスにペアリングできる(これもiPhoneにインスパイアされた機能だ)。

Fitbitの「Sense 2」。

Photograph: Fitbit

その他の面では、FitbitにはApple Watchをしのぐほどの改良がみられる。例えば、Versa 4もSense 2も丸1週間もつというバッテリーを搭載し、わずか12分の充電で1日分のバッテリー容量をまかなえるという。「Apple Watch Series 7」の場合、同じ充電時間なら1日分の容量をまかなえるかどうかといったレベルだ。

Google マップで曲がり角のたびに指示を出す仕様や、Google ウォレットによる「Google Pay」といったグーグル主導による機能変更も、これらのウェアラブル端末に採用されると予想されるが、発表時点では明らかにされていない。

Versa 4にはGPS機能が搭載されるほか、40種のエクササイズモードによってワークアウト用に最適化されている。これに対してSense 2には、新たにボディレスポンス(身体反応)センサーが搭載された。

初代Senseではストレスを計測する際に、金属製のベゼル(画面の枠)に手を当てる必要があった。それがSense 2では一時的な測定ではなく、継続的に皮膚電気活動(EDA)や心拍数、心拍変動(HRV)、皮膚温をモニタリングし、ストレスの引き金となる要素の特定をサポートしてくれる。また「チェックイン」機能は、呼吸誘導などのストレス管理ツールでストレスを解放するよう促してくれる。

さらに両モデルともに、従来モデルと比べて大幅な軽量化と薄型化を遂げている。さらにVersaおよびSenseシリーズのアクセサリーには、ブラックオウンド(黒人経営)のファッションブランド「Brother Vellies」が手がけた製品が含まれる。インフィニティベルトの種類も豊富で、これも間違いなくApple Watchの「ソロループ」を意識したものだろう。

Inspire 3と同様に、どちらも「今日のエナジースコア」や睡眠データ、高度な「ストレスマネジメントスコア」などを、Fitbit Premium経由で利用できるようになっている。これらの製品を購入すると、Fitbit Premiumのサブスクリプションが6カ月分ついてくるのが、せめてもの救いかもしれない。

Fitbitの「Versa 4」。

Photograph: Fitbit

Fitbitならではの魅力

Apple Watchは、いまもスマートウォッチ市場を独占し続けている。それでも個人的には、Fitbitのデザインの魅力的なところやシンプルさが好きだ。

グーグルはフィットビットの買収により、アップルと戦いやすいポジションを手に入れた。しかし、それがフィットビットのウェアラブル端末がよりよく、よりスマートになることを意味するのか、完全に明確になっていたわけではなかった。Wear OSを搭載したフィットネストラッカーにFitbitの“DNA”が入ったことで、あの使いにくさが多少は改良される可能性を意味したにすぎなかったのである。

だが、バッテリー持続時間の向上や薄くなったディスプレイ、Fitbitの先進的なヘルスケア機能など、グーグルとフィットビットの専門性を融合させるような小さくても重要な改良は、支持したいという気持ちにさせる。あとは有料で提供されるFitbit Premiumさえ何とかなればいいのだが。

WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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