TUNIC - レビュー

可愛らしいキツネに騙されないで!

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『Tunic』は一見カワイイ感じのタイトルだが、見た目に騙されてはいけない……と言おうとしたが、本作は見ただけでも心を奪われてしまうようなゲームである。アートスタイルはSwitch版『ゼルダの伝説 夢をみる島』のように色鮮やかであり、穏やかで美しい音楽が流れ、カワイイ狐の勇者を操作することになる。初期の「ゼルダの伝説」作品から大きな影響を受けている『Tunic』は、クオータービューの単純なアクションRPGのように見えるかもしれない。だが実際には、簡単どころかハードコアな挑戦がプレイヤーを待ちうけており、攻略には戦闘スキルと頭脳の両方が要求される。フワフワしたしっぽを持った狐が主人公でも、本作は決して「子供向けゼルダ」ではないのだ。私は『Tunic』を実際にプレイして、予想以上に難しい戦闘と複雑な謎解きに直面することとなった。それでもゲームに慣れてくると、本作は最高の形で構想を実現した傑作であることを理解できた。

『Tunic』では昔のゲームのように、プレイヤーへの説明やチュートリアルがないままゲームが始まり、ここは私が気に入っているポイントだ。誇張ではなく、本当に一切の情報が明かされない。ほとんどのセリフやゲーム内の言葉は謎のシンボルで表記され、主人公Tunicは何も喋らない。クエストマーカーみたいな目印は存在せず、ヒントもなく、パンくずのように行き先を示すアイテムも落ちていないため、あらゆるものを直感で学んでいく必要がある。世界をただ探索していてもなんとなく理解はできるが、一番大事となるのは説明書のページを集めて、解読することだ。

ゲーム内説明書は、ファミコン時代のゲームに付属してきたようなものである。一部のページにはペンで書き込みがされており、メモ欄も活用されている。この説明書も『Tunic』の独自言語で書かれたものだが、挿絵を見ていけば手がかりや目的を理解していけるだろう。ある意味では、IKEAで売られている家具の抽象的な説明書に近いかもしれない。私の失敗談から考えれば、このゲーム内説明書は絶対に無視せずじっくりと目を通しておいたほうがいい。読まなかった私は、まず勝てない状態で序盤のボスに挑み続ける羽目になったが、説明書をちゃんと読んで手がかりを得れば避けられる事態だったのだ。ゲームを進めるために説明書が必要となるのは非常におもしろい作りだが、ゲーム外の攻略情報がほしくなることもあるだろう(頼っても恥ではないので、ぜひ使ってくれ)。

集めた説明書をじっくり解読したなら、地上世界やさまざまなダンジョンで戦いに挑む時である。剣を振るい、盾で防御し、ダッシュ移動し、ドッジロールで回避し、『Tunic』の豊富に用意された敵と戦うのだ。特徴的な点として、本作の序盤で一度剣を入手すればその後新たな技を学んだりすることはない。プレイヤー自身の操作技術を高め、より上手に戦っていく必要があるのだ。基本的な技を活用するのはもちろん、入手したアイテムを活用するのも重要であるが、アイテムの使い方はゲーム側からは教えられないのでプレイヤーが自ら覚えていく必要がある。ダイナマイトやゲーム後半の魔法アイテムなど、こういったアイテムはゲーム内に隠された宝箱に入っていたり、恐ろしい見た目だが味方である商人から買うことができる。各アイテムの使い方を理解して賢く活用していけば、ボタン連打のゴリ押しで倒そうとするよりも大幅に勝率は高くなるだろう。もっとも、アイテムを活用してさらにゴリ押しする必要が出てくることもあるが。

A wolf in fox's clothing.

ダイナマイトは、『Tunic』に出てくる中でも私が特に気に入ったアイテムである。ゲームを開始してすぐに入手可能で、ゲームの最後まで有用であるアイテムであり、ボス戦では本当に役に立つ。敵集団を一度に爆破してもよいが、タフなボスの体力ゲージを一気に削りたいときに真価を発揮するのだ。投げたダイナマイトの動きは不規則になりがちで、これによって使いやすくなっている場面もあるが、崖の近くにいる敵には投げない方がよいだろう。Tunicはダイナマイトを遠くまで投げてくれるが、敵にヒットした際には爆発せず時間差で爆発するのも特徴だ。ヒットして地面へ落ちた後も、転がってから爆発することもある。また、水場の近くにいる敵に対してダイナマイトは役に立たない。水へと落ちれば、当然ながら火は消えて不発となってしまうのだ。

大きいボス敵から小さいザコ敵まで、『Tunic』に出てくる敵は油断ならない相手だ。ハッシャーやオートボルトといった単純な動きの敵でも、攻撃を許せばプレイヤーの体力を削り取ってくる。彼らのAIは非常に賢いわけではなく、愚かすぎるわけでもないため目立たないが、少しでも攻撃を喰らえば手痛いダメージを喰らうのだ。それぞれの敵には強化された「ヒーロー」版も存在し、動きが遅い代わりに攻撃力がさらに増加している。たくさん用意されたボス戦も、非常に歯ごたえがある難易度だ。セーブは各所に配置された燭台付きの像を使う必要があり、セーブ後には体力と魔力が全快するかわりに倒した敵も復活してしまう。「DARK SOULS」作品を遊んだ人なら馴染みのあるシステムだろう。

本作ではボス戦は豊富に用意されており、そのどれもが印象的で、凶悪な強さである。しかし、この難易度が楽しさを生んでいるのだ。『Tunic』では難易度設定は存在せず、クリアするにはプレイを続けて慣れていくしかない。剣での3連攻撃はボス戦で勝つには絶対に覚えておくべき技で、例のゲーム内説明書で存在が示唆されているが、ただプレイしていてもそのうち発見することができるだろう。ボスとの戦いでさらに重要な技として、わずかな無敵時間が得られるドッジロールもある。ドッジロールもボス戦で勝つには必須であり、戦いで必要なアイテムをX・Y・Bボタンに事前装備しておくのも大事である。激しい戦いを経てボスをなんとか倒した際には、達成感をはっきりと感じられるはずだ。

 
『Tunic』はシリーズ初期の見下ろし視点ゼルダ作品に影響されているため、最初は到達できないが後から行けるようになる、いわゆるメトロイドヴァニア風の探索要素も満載だ。なぜか行くことができない場所、閉まっているドア、解除することができない仕掛けなどがあったら、そのうち入手できるアイテムを使って解決できるはずだ。あとになってその場所へと戻り、入手した道具で隠された謎を暴くのは、やはり楽しい。『Tunic』の世界は冒険していてとにかく楽しい場所であり、地上世界は明るくカラフルで、ダンジョンでは大きく異なる雰囲気を感じられる。たとえば巨大なクモの洞窟はまさに中世ファンタジーなダンジョンだが、修道院のように未来的で異質な場所も用意されているのだ。

​『Tunic』をクリアするまで15~20時間程度かかった。物語は、ゲーム中にある手がかりをつなぎあわせれば理解が深まってくる。だが私は物語を最後まで見て特別に感動したり満足するようなことはなかった。個人的にはストーリーよりも冒険自体が心に残ることとなったが、人によって感じ方は異なるかもしれない。

総評

私は9歳のときに初代『ゼルダの伝説』をクリアすることができたが、もし9歳児の私が『Tunic』をプレイしていたらまずクリアできなさそうだ。カワイイ狐が主人公なおかげで簡単に見えるかもしれないが、『Tunic』を一度始めればすぐに高い難易度を実感できるだろう。本作は、『ELDEN RING』世代が間違いなく楽しめるゼルダ風ゲームだ。謎の言語で満たされたゲーム内説明書を直感的に読み解き、プレイヤー自身の操作技術を磨いていかなければ、本作の凶悪な敵には打ち勝てないのだ。『Tunic』のキャンペーンはとにかく上手に構成されており、クリアした私は忘れることができないような達成感を得られた。

※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。

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歯ごたえたっぷりの2Dゼルダ風アクションゲーム『Tunic』レビュー

9
Amazing
『Tunic』は、激しい難易度を隠そうともしないアクションアドベンチャー作品だ。かわいらしい世界を冒険できる本作は多層的な構造となっており、攻略するたびに達成感を得ることができる。
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